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フライウェイトパターン

公開日:November 17, 2024更新日:November 28, 2024
TypeScriptDesign pattern📄

フライウェイトパターン

フライウェイトパターン(Flyweight Pattern) は、共有を通じてメモリ使用量を最適化するためのデザインパターンです。このパターンは、同じようなオブジェクトが大量に生成される場合に、それらの共通部分を共有して重複を減らし、システムの効率を向上させます。

フライウェイトパターンは、ゲームにおけるキャラクターの描画や、大量の文字オブジェクトを扱うテキストエディタなどで使用されることがあります。同じ状態を共有し、必要な部分だけ個別の状態を持たせることで、メモリの使用量を減らすことができます。

TypeScriptでのフライウェイトパターンの実装

以下に、TypeScriptでフライウェイトパターンを実装する例を紹介します。この例では、森の中にあるたくさんの木を効率よく管理するためにフライウェイトパターンを使用します。

森の木の例

typescript
// フライウェイトオブジェクト(共有される部分)
class TreeType {
  constructor(public name: string, public color: string, public texture: string) {}

  display(x: number, y: number): void {
    console.log(`Displaying ${this.name} tree at (${x}, ${y}) with color ${this.color} and texture ${this.texture}`);
  }
}

// フライウェイトファクトリー
class TreeFactory {
  private static treeTypes: Map<string, TreeType> = new Map();

  static getTreeType(name: string, color: string, texture: string): TreeType {
    const key = `${name}_${color}_${texture}`;
    if (!this.treeTypes.has(key)) {
      this.treeTypes.set(key, new TreeType(name, color, texture));
    }
    return this.treeTypes.get(key)!;
  }
}

// 個別の木オブジェクト(共有されない部分)
class Tree {
  constructor(private x: number, private y: number, private type: TreeType) {}

  display(): void {
    this.type.display(this.x, this.y);
  }
}

// 森の管理クラス
class Forest {
  private trees: Tree[] = [];

  plantTree(x: number, y: number, name: string, color: string, texture: string): void {
    const treeType = TreeFactory.getTreeType(name, color, texture);
    const tree = new Tree(x, y, treeType);
    this.trees.push(tree);
  }

  display(): void {
    for (const tree of this.trees) {
      tree.display();
    }
  }
}

// 実際の使用例
const forest = new Forest();
forest.plantTree(10, 20, 'Oak', 'Green', 'Rough');
forest.plantTree(15, 25, 'Oak', 'Green', 'Rough');
forest.plantTree(30, 40, 'Pine', 'Dark Green', 'Smooth');
forest.display();

解説

  1. TreeTypeクラス(フライウェイトオブジェクト)

    • TreeTypeクラスは、木の名前、色、テクスチャなどの共有されるプロパティを持っています。これにより、同じ種類の木に対してメモリを効率よく共有できます。
  2. TreeFactoryクラス(フライウェイトファクトリー)

    • TreeFactoryクラスは、既に存在するTreeTypeを管理し、同じ属性を持つ木の種類が要求された場合には既存のインスタンスを返します。これにより、重複したインスタンスの生成を防ぎます。
  3. Treeクラス(個別の木オブジェクト)

    • Treeクラスは、木の位置情報(xy)を持ち、TreeTypeオブジェクトと組み合わせて管理されます。Treeクラスのインスタンスは共有されない情報(位置)を持っています。
  4. Forestクラス(クライアントコード)

    • Forestクラスは、木を植える操作を行うクラスで、木の種類(TreeType)を取得して木(Tree)を管理します。
  5. 実際の使用例

    • Forestに複数の木を植えています。同じ属性を持つTreeTypeは共有され、異なる位置情報を持つ木のインスタンスが作成されます。

利点

  • メモリ使用量の削減: 同じプロパティを持つオブジェクトを共有することで、メモリの使用量を大幅に減らすことができます。
  • 効率の向上: 大量のオブジェクトを効率的に管理することができるため、特にゲームやグラフィック処理など、パフォーマンスが重要な場面で効果を発揮します。

使用例

  • ゲームにおけるキャラクターやアイテムの管理: 多くのキャラクターやアイテムが同じ見た目や動作を持つ場合、フライウェイトパターンを使って共有し、メモリ使用量を削減します。
  • テキストエディタ: テキストエディタで、同じフォントやスタイルの文字を大量に扱う場合、フライウェイトパターンを使ってメモリ効率を向上させます。
  • グラフ描画: 大量のノードやエッジを持つグラフを描画する場合、共有できる情報をフライウェイトとして扱うことで効率を向上させます。

まとめ

フライウェイトパターンは、大量のオブジェクトを効率よく管理するための強力なパターンです。同じ状態を持つ部分を共有し、必要に応じて異なる状態を個別に管理することで、メモリの使用量を削減し、パフォーマンスを向上させることができます。

TypeScriptでの実装を通じて、フライウェイトパターンの基本的な概念と、その有効な使い方を理解することができました。このパターンを活用することで、特にメモリ使用量が重要なアプリケーションで効果を発揮します。