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ディペンデンシーインジェクション(DI)

公開日:November 17, 2024更新日:November 28, 2024
TypeScriptDesign pattern📄

ディペンデンシーインジェクション(Dependency Injection、DI)

ディペンデンシーインジェクション(Dependency Injection、DI) は、オブジェクトが依存している他のオブジェクトを、自分で生成するのではなく、外部から提供してもらう設計手法です。このパターンにより、クラス間の依存関係を減らし、コードの疎結合化、テストのしやすさ、拡張性を向上させることができます。

DIを使うことで、クラスは依存するオブジェクトを直接生成せず、外部から受け取るようになります。これにより、各クラスは自身の目的に集中でき、他のオブジェクトの生成方法に依存しなくなります。

TypeScriptでのディペンデンシーインジェクションの実装

以下に、TypeScriptでディペンデンシーインジェクションを実装する例を紹介します。この例では、サービスを外部から注入することで、クラス間の依存関係を疎結合にしています。

サービスを注入する例

typescript
// メール送信サービスのインターフェース
interface MailService {
  sendMail(message: string): void;
}

// 具体的なメール送信サービスA
class GmailService implements MailService {
  sendMail(message: string): void {
    console.log(`Sending email using Gmail: ${message}`);
  }
}

// 具体的なメール送信サービスB
class OutlookService implements MailService {
  sendMail(message: string): void {
    console.log(`Sending email using Outlook: ${message}`);
  }
}

// メール通知クラス
class Notification {
  private mailService: MailService;

  constructor(mailService: MailService) {
    this.mailService = mailService;
  }

  sendNotification(message: string): void {
    this.mailService.sendMail(message);
  }
}

// 実際の使用例
const gmailService = new GmailService();
const outlookService = new OutlookService();

// Gmailサービスを注入して通知を送信
const notification1 = new Notification(gmailService);
notification1.sendNotification('Hello via Gmail!'); // "Sending email using Gmail: Hello via Gmail!"

// Outlookサービスを注入して通知を送信
const notification2 = new Notification(outlookService);
notification2.sendNotification('Hello via Outlook!'); // "Sending email using Outlook: Hello via Outlook!"

解説

  1. MailServiceインターフェース

    • MailServiceインターフェースは、メール送信サービスが共通して持つメソッドsendMailを定義しています。これにより、具体的なメール送信サービスがこのインターフェースを実装することで、統一された方法で利用できます。
  2. GmailServiceとOutlookServiceクラス(具体的なサービス)

    • GmailServiceOutlookServiceは、MailServiceインターフェースを実装した具体的なクラスです。各クラスはsendMailメソッドを持ち、異なる方法でメールを送信します。
  3. Notificationクラス(DIを利用)

    • Notificationクラスは、MailServiceに依存していますが、自分でサービスを生成するのではなく、コンストラクタで外部から受け取ります。これにより、Notificationクラスはどの具体的なメール送信サービスを利用するかを意識する必要がありません。
  4. 実際の使用例

    • GmailServiceOutlookServiceをそれぞれインスタンス化し、それをNotificationクラスに注入しています。これにより、Notificationクラスはどのサービスを使っているかに依存せず、柔軟にサービスを切り替えることができます。

利点

  • 疎結合の実現: クラス間の依存関係を減らし、サービスの実装に依存しないコードを書くことができます。これにより、コードの保守性が向上し、新しい機能の追加や既存の機能の変更が容易になります。
  • テストのしやすさ: テストの際に依存するサービスを簡単にモック(仮のオブジェクト)に置き換えることができるため、ユニットテストが行いやすくなります。
  • 拡張性の向上: 新しいサービスを追加する場合も、既存のコードを変更する必要がないため、システムの拡張が容易です。

使用例

  • 依存性注入フレームワーク: Angularなどのフレームワークでは、DIコンテナを使って自動的に依存オブジェクトを注入する仕組みが採用されています。
  • 設定変更に対応するアプリケーション: 異なる環境(開発、本番など)で異なる設定やサービスを利用する必要がある場合、DIを利用することで環境に応じて適切なサービスを注入できます。
  • テスト環境でのモック注入: 本番のサービスの代わりにテスト用のモックサービスを注入することで、簡単にテストを行うことができます。

まとめ

ディペンデンシーインジェクションは、オブジェクトの依存関係を外部から注入することで、クラス間の結合度を低く保ち、コードの保守性やテスト性を向上させる設計手法です。TypeScriptでの実装を通じて、外部から依存オブジェクトを注入することで、柔軟なコードを書く方法を理解しました。

このパターンを利用することで、依存関係の管理が効率化され、変更に強い、拡張性のあるアプリケーションを構築することが可能になります。